2011年05月27日

ハンカチ

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大阪でいつも走るコースは、

淀川河川敷に着くまでに

デカい工場や会社、古い住宅街を通る。

野田阪神駅前から176号線までつながる道路の

途中を左折する。夜はかなり静か。


角のマンションの二階には、有名な博多らーめん店の

真っ赤なTシャツが、いつも1,2枚干されてる。


その向かいには、元喫茶店の居抜き物件。

純喫茶風でいいかんじ?のレトロものなんだけど、

こんなわかりづらい場所ではそもそもムリだったでしょ…と思う。

当然1年くらい“テナント募集中”。


道路にはみ出して立ってる木には、しめ縄がついていて…

御神木かな。この木がなんか好きだ。




コインパーキングがあってその前、道のど真ん中に

ハンカチが落ちてた。


何かのお祝いの“お返し”で貰うようなかんじの、

百貨店で売ってそうなブランド。よくある、

ロゴが浮き出してるタオル地のやつ。男物。




新しい草の匂いがする公園を越えると

堤防の横に出る。

もっと濃厚な草や土の匂い。

子供の頃は神戸の田舎の方に居たから、珍しくなかったはずだけど。


土の匂いがわかるほどに、今の生活に土はない。






帰り道。

コインパーキングまで来て、さっき見た

落ちてるハンカチが変に気になった。



…。結局手にとってどうしようかと考える。


『ハンカチ一枚なくしても、誰も気にしないけどな…』


目立つ場所に置いておこう…と、探したものの適当な場所がない。

…再び周りを見渡して。電柱に横巻きされたワイヤーを発見、

そこにハンカチをひろげるカタチ(正方形)で挟み込んだ。

ロゴを見えるように…と。



1日目。


2日目。


3日目。

…4日が経っても、


やっぱり、ハンカチはそのままで居た。

干渉してしまったせいで、どうにもこのハンカチが気になる。


あーあ。余計なことをした。


…だいたい近所に住んでる人なのか、仕事でこの近くに来た人なのか、

わからないのに。車で来た人だったら他のパーキングだって使うし。


…明日から雨なんだよなぁ。



ふとコインパーキングの端の照明灯が目に入る。

高さ2mくらいのところに配電盤みたいなボックス。

そのボックスの下からは太めのケーブルが

ループ(輪)状になって出ていた。 


ハンカチをこのボックスの下にひっかけとこう。

多少の雨にも濡れないし、しっかり固定出来る。

通る人から見えなくもないし…って、やっぱり期待してんのかというと、



…たぶん落とし主は見つからないと思っている。


ただ。

毎日、太陽の光とか風にさらされて、

いつかボロボロになってく、ハンカチを見るのは嫌だった。

どこにも辿り着かなかったなぁ…みたいな気持ちというか…。


もちろん、誰も拾ってくれと頼んでないから、自己満足ゲームだけどね。

感謝されたいとかは思ってないし。

自分は1つ良い事しましたよって思いたかった…と。

…それも違うか。結局なんだ?と言われたら困るけど、


もしかしたら“賭け”をしてるだけなのかもしれない。


子供の頃によくやる

“あの電柱まで、何歩で辿り着いたらラッキー”とか“死ぬ”とか

ワケわかんないルールに似てる。

“もし持ち主があらわれたら”…なんなんだろう。


僕は何を賭けているのだろう。



ハンカチの持ち主は、

“ここをたまたま通っただけの人だった”…とか、

“落としたことさえ気づかなかった”…とか

“失くしても探すほどのものではなかった”…とか。

いくらでも負ける要素は出て来る。


今日持ち出した、そのガラさえ憶えていないもの。

ハンカチ1枚なんてそんなもん。




次の日、昼間は雨が降ってたが、夜にはやんだ。

走りに出る。



…ない。

…ないっ!よな…。

…ホントか?


配電盤の下から、横の溝から、コインパーキングの敷地内も探す。

風も考えてそこらじゅうの道を見て回った。


…なかった。



誰かが、引きとったのだ。と感じた。

たぶん持ち主。そこだけは勘。

誰が使ってたかわからないハンカチを僕なら使わない。



嬉しかった。




“誰か”にとって、そのよくあるハンカチは

“自分のものだ” と分かるものだったし

“また使おう”と思う“価値”があったのだ。



当たり前だと思うかな。

僕にとっては当たり前じゃない気がするんだけど。



それがなんだか嬉しい。





なんだかしあわせを感じたんだ。






ハンカチを引き取った“誰か”が絶対持ち主か?という奴はいるだろう。

そういうこと信じてみるのはバカかもしれないけどね。

少なくとも僕はいいんだ。







走るのは夜が多いけど、写真は昼
posted by 宇野伸茂 宇野正剛 at 21:05| 大阪 ☔| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月05日

花見野球

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桜の樹の下で野球をした。

バットはそこらに落ちてた木の棒だったけど

投げる笑吉(しょうきち)くんは本気だし、グローブだってはめてた。

僕がよく行く福島区のバー・SMILEのマスター“まっさん”の長男8歳。


まっさんの声がけで集まった花見。

そりゃあ、大人の宴会なんて子供には退屈だよな。

僕も昔、正月に催される親戚たちとの会合が苦手だった。


“うららか”というのはこんなかんじをいうのだろう。

やわらかい風が吹いてた日。

こんな街中の公園でも、数は少ないけど遊具があって

笑吉くんの妹、笑花(えみか)ちゃんは馬の形の

ジャングルジム?によじ登ってた。


花見って結局、飲んで食べて話すくらいだから

一通り気がすんだ大人たちは

子供達につられて遊び始めた。


ビールを2本飲んだころ、座ってたブルーシートに

ころころと転がって来たボールは

誰かがアルミホイルを幾重にも丸めて作った球に替わっていた。

「あれ?ボール、どうしたんですか?」

「さっき○○さんが本気で打ってしまって…あのビルの上のどっかに」

アホだね〜、などと一緒に笑ったものの、気持ちがわからなくもない。


大人が手を抜いてると、子供はナメられてるのがわかるじゃない。

だから笑吉くんは余計必死で投げるし、打つ大人も差し込まれて本気で打った。

笑吉くんの勝ちだな。


後ろにそらしたボールを拾い疲れたキャッチャーに替わって座る。

しんどいし他の人は立ってやってたけどさ…

子供の頃よくピッチャーしてて。キャッチャーが座ってる方が投げやすい。


気持ちは伝わるもんで。

ここに来い!というところでかまえると、なかなかいいコントロール。

また、このアルミホイルのボール。いい重さだねぇ、投げやすい。

楽しくなってきた。

まぁ、多少飲んでることは別にして。

野球なんて何年ぶりだ。きれいに胸の前に返球してやろう。

このバッターの人は野球経験者だな…。



ん?

カーブ?

少し曲がって落ちた。バッター空振り。


…なんか、ちょっとだけ鳥肌たってしまった。

8歳の子供が、大人に太刀打ちするために

仕掛けてきたんだよな。こそっと確信犯で。


打たれるのはわかってる。

…から1回だけでも空振りさせたいんだコイツ。

本当は三振を獲りたいけど大人にはかなわないから。

ナメられて終われない。抵抗。


この歳なら、ヒジに負担かけるから変化球禁止じゃなかったっけ。

禁じ手を使いやがった。なりふりかまわず。お遊び野球で。

かっこいいじゃん、その意地みたいなもん。

僕にはなかったものかもな。



そういえば…。このバッテリー。この組み合わせ。

笑吉くんと僕は誕生日が一緒なのだ。

よくまっさんに

「これで血液型も一緒だったら、悪いけどロクな人間にならないよ」

なんて言ってたけど(ちなみに笑吉くんの血液型は未だに調べてない)



笑吉くんにとって今回の誕生日は記憶に残っただろう。

震災と津波と原発損壊の明くる日。12日。

多くの日本人が

「いったい何がおこったのか」わからないけど嫌な予感がした日。



地震と津波なら見える。

原発事故は子どもにとってどう理解したのだろう。

子どもにとって今、大人ってどう見えてんだろ。

スイッチを切っても温度が上がり続けるモノを作って、

目に見えない“何か”で、人の身体も農地も海も侵してしまったようだ。

そんな人の手におえないモノが、それでも必要な世の中で。

学校で習った日本地図の一部には、

しばらく“人が入ってはいけないマーク”がつくかもしれない。

それは“尊敬しなさい”と言われる大人がしたことだ。



それでなくても大人の背中なんて透けてるか…

『がまんしなさい』なんてえらそーに言ってても、

大人は欲しいものだらけじゃないか。


限定品ほど欲しくなるし、人のものほど良いものに見える。

手に入りそうにないものには執着するけど、

手に入ったら他の何かが目に映る。きっとそれも欲しくなる。

厄介で屈折した欲望は衝動を後押しして、行動のエリアに一歩はみ出す。

ヤっちゃうと開きなおる。バレてもいいんだ。

リスクのないように“事”を運ぶことを仕事と言うからね。

ヤバい時は誰かの所為にして。責めた相手を斬り捨てればいい。

理由は後から正当化できるよ、自分の中ではさ。仕方なかったと。

誰かを傷つけることは意外と自分にはカンケーないのさ。


政治なんてわからなくても、国同士も、仕事の関係も、友だちでも男女でも、

大人はそんなもんじゃないかとうすうす感づいてる。


見てるから。





彼だって、どうしてもいつか大人になるだろう。けど…。




誰かにナメられたとき、

意地で1球、カーブを投げるはずだ。







P.S
まっさんの店の名はSMILE。子どもは笑吉、笑花。
いい名前だよ。素直に笑える人になってほしい。
posted by 宇野伸茂 宇野正剛 at 20:24| 大阪 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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