2010年04月10日

甲斐くんと高円寺

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何年前だろうか。高円寺に初めて降り立ったのは。

用事もないのに降りる駅としては一番かもしれない。

もちろん最初はミーハー心で、

いろんなトコに行きましたが

どうやら代官山は似合わないし、

下北沢にわざわざ行くのもねぇ。

JR使ってて寄り道ぽく行ける手軽さと、

子供からお年寄りまで受け入れるのどかな商店街の

間口の広さ?で居心地がよいのかもしれない。

トガった古着屋さんとかもあるにはあるけど、

何せ格好をつけてないトコがいい。

お洒落な人種が「高円寺っぽい」と、

少しバカにした言い方をするから、逆にいい。

お洒落すぎる人種は、むしろ田舎くさい気もする。



『アニマル洋子』という店には必ず行く。

何十回も行ってるくせに、僕は知らなかったのだけど

高円寺の高円寺らしさ?を創った老舗らしい。


基本は古本屋。で、

ファッション関係の専門学校や大学が近隣にあるとかで

一番充実しているらしい。

…らしい、というのは、

僕が気をつけて見てなかったジャンルだから。

戯曲とか映像や演劇関連の本も結構置いてるし、

フェチズムとはっ、エロとはっ、排泄とはっ…

みたいなのもあるし、

UFOや、ストーンズや、宗教、オカルト…

要するにそういう雑多なサブカル?系のものが多い。

で、店の半分は基準がよくわからない古着(失礼)や、

セーラー服とかの制服が並んでたり。


何度目かに行ったとき、

『よくお見かけしますが、(家は)近いんですか?』

ぼさぼさ頭のお兄ちゃんが話しかけてくれた。

それが甲斐くんだった。

人は見た目で判断してはいけない。

ぱっと見だと、古本屋の隅で本に埋もれて

店番してる甲斐くんを「サブカル好きのマニアック店員」と

思い、お金を払うときにどきどきする客も居たと思う。

が、甲斐くんは立ち上がった瞬間、

極端に…それ以外の言葉が浮かばないが極端に

腰が低くて愛想が良いのである。

あまりに腰が低い人当たりなので、

100円、200円の買い物してごめん!という気になる。


いつも笑顔だ。



去年のこと。閉店間際で客が僕しか居ないときに

地震があった。

甲斐くんは、レジのある奥から店の外に出ていって、

僕に向かって微笑みながら手招きをした。

暇だし、一緒にタバコでも吸いませんか…

と誘ってくれてるのかなと思い、外に出たら

『いやぁ、この建物古いから、地震ヤバいんですよね…』

自分が出る前に言ってほしいものだが、

そのときも甲斐くんは笑顔だった。



たまに店が終わった後で『焼き鳥大将』で呑んだ。

何杯目かになると甲斐くんは決まって言った。

『いやぁ、ウノさんと飲めてよかった。

僕の目に狂いはなかった』

…いまいちその言葉の意味はわからないけど、

僕も甲斐くんと呑むのは楽しい。

甲斐くんは少し涙もろい、情のあつい男なのである。



そんな甲斐くんはデスメタルのバンドをやっていたが、

音楽的意見の違いで解散し、今は一人だ。

『曲聴かせてよ』

といっても微笑むだけでいまだに聴かせてくれない。



最近甲斐くんからメールが来た。

お店をやめたらしい。



甲斐くんが居ないアニマル洋子は少しさびしい。








posted by 宇野伸茂 宇野正剛 at 19:47| 大阪 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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